気仙沼市

水産業が盛んな宮城県気仙沼市は、現在、水産DXを積極的に推進しています。その一環として、漁港管理や養殖施設の保護などにVerkadaのセキュリティカメラを活用。AIによる高度な映像分析を停泊船の管理や、設備の保全、防犯などに役立てるだけでなく、クラウドならではのデータ活用のしやすさを活かし、観光向けライブ配信なども構想しています。
お客様の課題
不確実性に対応するために水産DXを推進。個別業務のデジタル化とデータ活用に取り組む
人手で停泊船を管理する漁港管理の省力化、沿岸漁業の設備にまつわるトラブルに対応したい
成果と展望
業務デジタル化の枠を越えて、セキュリティカメラの映像を観光などに活用していきたい
AI分析機能を備えたセキュリティカメラで漁港の無人管理と沿岸漁業の設備を保護
漁港管理のデジタル化に取り組む
日本有数の水産都市である宮城県気仙沼市は、遠洋漁業から沿岸漁業、水産加工業まで多岐にわたる水産業が地域経済を支えています。しかし近年、黒潮の大蛇行や海水温の上昇など、海洋環境の変化が大きなリスク要因となっています。「変化を予測することは難しく、熟練者の経験や勘だけでは対応しきれない場面も増えています。漁獲量と地域経済が直結する気仙沼市にとって、この不確実性は大きな不安要素の1つです」と気仙沼市役所の小野寺 幸史氏は言います。
同市は、この状況をデジタルの力で打開したいと考えています。例えば、沿岸と漁港など、異なるデータを組み合わせて相関分析を行えば、新しい発見をしたり、精度の高い予測モデルを構築したりできるかもしれません。そうして不確実性を克服し、水産業の安定および成長を目指す同市の計画は、その価値が認められ、水産庁の「デジタル水産業戦略拠点」にも選定されています。
具体的に、同市の水産DXは、人手不足への対応やムダの削減などを目的とする個別業務のデジタル化と、そこから生成されるデータの横断的な活用を2つの軸としています。この考え方のもと、様々な業務のデジタル化を進めており、その1つに漁港管理があります。
気仙沼漁港は、全国から大型船、中小型船など多種多様な船が停泊する大規模な港です。岸壁は場所によって水深や仕様が異なるため、船は種類に応じて、決められた場所に停泊しなければなりません。これまでは監視員が目視で停泊している船をチェックし、その管理を行ってきました。「船の名前や停泊位置、期間を監視員が目で確認し、帳面で管理しながら、必要に応じて停泊場所の変更などを依頼する。その体制を維持し続けるのは負担が大きい上、このままではデータもたまらない。無人化や省人化を前提にデジタル化を検討していました」と小野寺氏は言います。
AI分析とデータ活用のしやすさを評価
漁港管理のデジタル化のために、同市が導入したのがVerkadaのセキュリティカメラです。セキュリティカメラを中核に、入出港や停泊状況を自動記録し、停泊指示や料金徴収に活用する仕組みの開発に着手したのです。
「セキュリティカメラは、このシステムの中核を担う重要な機器となります。映像から、ある特徴を持つ人物の動線を追跡する、見つけたい人物や車両を特定する、不審な動きを検知するなど、特長の1つであるAI映像分析機能に期待してVerkadaを選定しました。この技術を有効活用すれば、映像内の様々な動きに応じて、自律的な処理を行う高度なシステムが実現できると考えたからです」と小野寺氏は言います。
また、LANケーブルで電源を供給でき、電源の確保が難しい漁港にも設置しやすいPoE(Power over Ethernet)対応、さらには、クラウドを活用した製品であることも評価しました。「クラウドなら、AI分析機能などのさらなる強化を期待できます。また、データ活用においても、APIを通じて他システムからクラウド上の映像データを参照したり、分析指示を送ったりして、多様な用途に利用できます」(小野寺氏)。
「見える化」で安全対策や災害対応にも
気仙沼市は現在、Verkadaのセキュリティカメラを活用した漁港管理システムの開発を進めています。船舶のデータベースと映像を相互参照し、入出港を自動で記録する仕組みや、カメラ映像から停泊位置を判断する仕組みなど、複数の機能を組み合わせたシステムを構築中です。
こうしたシステム開発と並行して、同市は沿岸漁業の安全確保や防犯にもカメラを活用し始めました。カキ養殖を営むヤマヨ水産の小松 武氏は、長年、大型船の航行ミスによる養殖施設の破損や、観光客を装った不審者による船外機の盗難といった被害に悩まされてきました。「私だけでなく、多くの同業者が同じ問題を抱えています」(小松氏)。
こうした課題に対応するため、気仙沼市は沿岸漁業エリアにもVerkadaのカメラを設置しました。「設置以降、被害はありませんが、施設近くで動きがあるとアラートが来るので安心です。
また、思わぬ場面でも役立ちました。ロシアのカムチャッカ半島沖の地震で津波が発生した際、私たちは沿岸から退避しましたが、その間もセキュリティカメラを通じて海や設備の様子を確認できたのです。津波が収まった後も映像を参考にしながら『このあたりが痛んでそうだ』と効率的に設備の被害を確認しながら、点検や復旧を進められました」と小松氏は振り返ります。

(沿岸漁業を見守るVerkadaのセキュリティカメラ映像)
ライブストリーミングを軸に観光への活用にも期待
水産DXの2つ目の柱であるデータ活用に向けても、同市は様々な構想を描こうとしています。直近で有力な分野が観光です。
例えば、気仙沼市魚市場には観光客向けの見学ルートが整備されていますが、現在は2階から見下ろす形の見学で、やや遠く、より臨場感を高められないかと考えていました。また、多くのお客様が日中に来場されますが、市場の取引は早朝に終了してしまっており、たくさんの魚が並ぶ、迫力のある風景を見せられないことも課題でした。今後、Verkadaのカメラの高精細な映像やアーカイブなどを活用し、気仙沼の新たな魅力発信につなげられないかと検討しています。
「AIS(船舶自動識別装置)の情報や水揚げデータ、カメラ映像を組み合わせて、その船が世界のどの海で操業し、どんな魚を獲ってきたのかを物語として伝えることもできます」と小野寺氏は語ります。小松氏も「牡蠣をむき身にするといった私たちの日々の作業が観光コンテンツになるのなら、漁港の一員としてぜひ協力したい。観光だけでなく、水産業の教育や、人材不足時代の採用促進など幅広い情報発信にも役立つかもしれませんね」と続けます。
水産DXの一環としてVerkadaのセキュリティカメラを導入し、漁港管理や沿岸漁業の保護、観光など多様な分野で映像データの活用を進めている気仙沼市。日本有数の水産都市が、今、日本有数の「水産DX都市」へと進化しようとしています。
気仙沼市デジタル水産業推進協議会
事務局(気仙沼市産業部水産課)所在地: 宮城県気仙沼市八日町一丁目1番1号宮城県気仙沼市八日町1丁目1番1号 [email protected]. jp